関係節の拡張

このような文の構造について学びます。 Come as you are.
I am happy the way I am.
I like the way you are.
Things as they are, we must wait and see.
It is so kind of you to help me.
He makes happy of her. Let go of him.
We speak ill of him.
We had wonderful time of it.

目次
  1. 【先行詞が形容詞の場合】
  2. 【関係詞の "as"】
  3. 【先行詞を含む関係詞 "as"】
  4. 【"It ...that..."の強調構文】
  5. 【"that.... =形容詞" という英文法の表示法】
  6. 【知られていない"It ...that"の強調構文】
  7. 【 "It is" の機能】
  8. 【主語付き形容詞と "It is ..."】
  9. 【主語付き形容詞の概念の拡張】


  1. 【先行詞が形容詞の場合】

    関係節は「与えられた文の任意の名詞に注目したとき、その文の残りの部分を形容詞として、その名詞を修飾する」という極めて簡単な機械的操作で作ることができるということは 「関係節の作り方」 の項で説明しました。しかし、実際の英語ではさらにこの操作が拡大されて使われているのです。上の関係節の作り方の下線部分である「名詞」が「形容詞」に置き換える操作を英米人は行なっているのです。よく考えてみれば、「名詞」とか「形容詞」などというカテゴリーに分けるということは、人間を「善い人」と「悪い人」に区分するのと同じで、便宜上の分類なのです。ただ、「名詞が形容詞で置き換えることによって規則を無視した。」という一見論理的な反論も、「悪い人がなぜ善いことをするのか?」という疑問を持つのと同じ位、厳密な論理にたてば意味のないことなのです。「善い人も悪い人も人間は人間」に相当する現象が英語においても、「名詞も形容詞も単語は単語」という形で起こっているようです。以下は名詞に注目した場合と、形容詞に注目した場合の比較です。

    名詞形容詞
    非修飾用法He wants to be a doctor.I think he wants to be famous.
    修飾用法a doctor he wants to befamous I think he wants to be
    (この形態は存在しない)
    関係詞を使うa doctor that he wants to befamous as I think he wants to be
    先行詞を含む関係詞what he wants to beas I think he wants to be

    上の表から分かるように、名詞の場合と形容詞の場合の違いは、形容詞の場合の関係 節の前には、必ず「関係詞」を添えなければならないということです。 また、"as"には "famous as I think he wants to be" のような「関係詞の "as"」と「関係詞を含む先行詞の "as"」があることが分かります。

  2. 【関係詞の"as"】

    関係詞の "as"で修飾されている先行詞の形容詞は次のように使われています。

    1. Cold as it may be, it's comfortable.
    2. He tried to be as nice as she was.
    3. He tried to be as nice as could possibly have been.

    [解説]

    1. の場合は "cold as it may be"という形容詞は C'(副詞句)として使われています。(「C’構文」参照)。次の変形でこのことを よく 理解しておいてください。

    2. の場合は、"as nice"(="so nice")という形容詞を "as"以下の関係節で修飾している のですが、実用的な観点に立てば、皆さんがよくご存じの "as ....as"という同等比較のパターンで覚えておいた方がよいと思います。ただ、この場合の "as she was"という部 分を自分で喋る場合は、前の形容詞 "as nice"を修飾しているという思いと連動させることが大切です。この本を書いた目的は、現代の機械的な処理を追求する学校文法、その他諸々の怪しげな「目からウロコ」理論から皆さんを解放することであることを忘れないでください。

    3.この例は、このような構造の起源は「重ね合わせ・省略の原理」が関与していることを示すものです。


    という2つの文を重ね合わせ、重複する部分("he")を省略すれば

    となります。

  3. 【先行詞を含む関係詞 "as"】

    Come as you are.
    I am happy the way I am.
    I like the way you are.
    Things as they are, we must wait and see.

    「先行詞を含む関係詞」という用語は適当でないと思いますが、一般に "what"がそのように呼ばれているので、暫定的にこの用語を採用しておきます。但し、学校文法では、"what"だけが「先行詞を含む関係詞」となっていますが、ここでは "as"も含まれます。"what"と"as"の違いは、"what"が名詞であるのに対し、"as"は形容詞であるということで す。もうひとつ注意しておかなければならないのは、この"as"は関係副詞の "how =as =way"で説明した、形容詞の "the way"と同じものです。関係副詞の場合の "the way he walks"="as he walks"の修飾用法に対応する非修飾用法は、He walks so. のように注目した形容詞は副詞句(=C’)として使われているものだけでしたが、ここでは、対応する非修飾用法が S+V+C 文型の C(=主格補語)として使われている形容詞、S+V+O+C 文型の C(=目的格補語)として使われているものも含まれています。 まとめれば、次のようになります。

    S+V+Cの主格補語S+V+O+Cの目的格補語C'(=副詞句)
    as he looks as I find himas he came home
    He looks that way. I find him that wayHe came home that way.
    He looks tired.I find him tired.He came home tired.

    上の ”as he looks", "as I find him", "as he came" は形容詞ですから、他の形容詞と全く同じように
    1. 修飾語
    2. S+V+C文型のC(=主格補語)として
    3. S+V+O+C文型のC(=目的格補語)として
    4. C'(=副詞句)として

    として使われます。

    なお、関係副詞の項で説明した、"the way" = "as" = "in the way"という関係はここでも成立しています。

    使用例

    1. 修飾語
      He may not be a nice person.
      He may not be a person as I find him.


    2. S+V+C文型のC(=主格補語)として
      He is not ill.
      He is not as he looks.


    3. S+V+O+C文型のC(=目的格補語)として
      She does not find him honest.
      She does not find him as I find him.

    4. C'(=副詞句)として

      He went home rich.
      He went home as he came.

      Come hungry.
      Come as you are.

      I am happy with what I have.
      I am happy the way I am.

      That done, we must wait and see.(C'=主語付き形容詞)
      Things as they are, we must wait and see.


  4. 【"It ...that..."の強調構文】

    関係節の作り方は「与えられた文の中の任意の語句に注目すれば、その語句以外の全ての部分をその語の修飾語とする。」ということが分かりました。では、次に修飾用法が与えられた場合、それに対応する非修飾用法を作るにはどのようにすればよいかということを考えてみましょう。関係節を作る場合と逆の操作をすればよいだけですから、それほど難しいことではありません。

    非修飾用法から修飾用法に変換する操作は完全に機械的でしたが、修飾用法から非修 飾用法への変換は、簡単ですが、機械的ではありません。上の例においても、先行詞の"the man"を関係節 "I thought was dead"のどの位置に「戻す」かということは、自分で判断しなければならないからです。例えば、"I thought was the man dead"のよう な戻し方の可能性もあるのです。"I thought was the man dead"という文が正しい英語ではないという判断は自分で行なわなければならないのです。

    修飾用法から非修飾用法への変換は、関係節の場合だけではありません。例えば、"my wife driving my car" のような修飾用法に対応する非修飾用法は、


    のように、1種類だけとは限らないのです。
    しかし、英語においては、全く機械的に行える修飾用法から非修飾用法に変換する方法が存在します。それは、修飾用法の前に "It is" を置くという操作です。 例えば、”the man I thought was dead"という修飾用法は、"It is the man I thought was dead."とすれば、基本的な意味は "I thought the man was dead." という非修飾用 法と同じになってしまいます。

    "my wife driving my car"の場合も全く同様に"It is my wife driving my car."と することができます。

    この項のタイトルが「It ...that..の強調構文」であるにもかかわらず、"It ...that.."というパターンの文はここでは一つも扱われていないと不思議に思っている人もいるでしょう。実は、"It ...that...の強調構文"は既にここで扱っているということを次に説明 します。

  5. 【"that.... =形容詞" という英文法の表示法】

    "It is my wife driving my car."等の文に関して、学校文法は、「"It is my wife that is driving my car."という "It ....that..." "that is" 部分が省略されている 。」という説明をしていますが、これは、「It ...形容詞の強調構文」という意味を「It ...that ...の強調構文」という表記法で表しただけのことを知らずに、日本人自慢の独自の「厳密な態度」が作用し、「強調構文には必ず "that"を使わなければならない」と 思い込んでしまい、たまたま、"thatで始まる関係節”のみをこの強調構文としてしまっているようです。この「厳密な態度」とは"a pretty girl"という用例を見て、「"girl" という語の前には必ず"pretty"という語を置く。」という法則があると思ってしまう態度です。日本における「冠詞」に関する議論などは、ほとんど全員がこの態度をとっており「どの名詞の場合には、どの冠詞が使われるか」という発想法に疑問を抱く人はほとんどいないため、いつまで経っても冠詞の問題は解決しないのです。"a petty girl" とい う用法が存在することから得られる情報は「"girl"は可算名詞だな」ということくらいで"three ugly girls"という用法も存在しても、何も問題はないのです。日本の英文法学者流に言えば「この場合の"three"は"a"、"ugly"は"pretty"という意味」ということになるでしょうし、翻訳会社などに必ずいる「厳密な」チェッカー流に言えば「"a pretty"になっていたり、"three beautiful"になっていたり、"girl"が "girls"になっていたり...、どちらかに統一してください。」という自称厳密屋の粗雑極まる考え方が英語界に充満しているのです。

    もう一つ不思議でならないのは、英文法の研究家ともあろう者が、英語における形容詞は"that......"という世界共通の表記法を知らないということです。英英辞書で形容詞は次のように説明されていることに気付かないのでしょうか?

    rich : adj.that has a lot of money

    この説明を見て、日本以外の世界の英文法研究家は "rich"は形容詞として使われていうということを知るのです。このような表記法が使われている理由は以下を見ればすぐ分かるはずです。

    つまり、"that"は関係代名詞の"that"であり、"who"や"which"の場合もありますが、英文法の研究者の中では、"that"に統一されて使われています。

    誰でも知っているこの約束事を知らずに、厚かましくも「"that is"が省略されている 」("It's my wife driving my car."の場合)とか「正しくは "that"」(”It's my wie who did it."の場合)などの説明をし続けるのです。この結果、"It's my wife driving my car."等の文を自ら進んで使う人がほとんどいなくなってしまっているのです。

  6. 【知られていない"It ...that"の強調構文】

    1. It is three years since I joined this company.
    2. "Is this your dictionary?" "Yes, it is my dictionary."
    3. Who is it?

    [解説]
    1. It is three years since I joined this company.

      この文は、次の文の強調構文です。

      Three years have passed since I joined this company.

      "thrre years"という名詞に関する修飾用法は
      three years that have passed since I joined this company
      この修飾用法に "It is "を付けると
      It is three years that have passed since I joined this company.
      という強調文ができます。ここで、強調文における強調をさらに徹底させるためには、下線部分のような強調されてない部分をとる必要があります。このようにして、通常の強調構文をさらに徹底した "It is three years since I joined the company."のような構文が成立しています。
      但し、現在ではこの文の代わりに "It has been three years since ......"という、文法書等によって使わないように注意されてきた文が英米の高級メディアでも正しい英語として使われています。この他にも「"different to", "different than" と言ってはならない」とか「"It's me."ではなく "It's I." である。」等と論理的な観点から学 習者に対して注意がなされてきましたが、これは英米では既に多くの人々が "different to"を使っており、ほとんど正しい英語として既に受け入れられることを意味しているの です。「するな」という人がいるということは「している」人が存在することを意味し、本当にしてはいけないことで、誰もそれをしていない場合には、「するな」と注意する必要がないのです。幼稚園の教室に「禁煙」の注意がないのは、その必要がないからで、幼稚園児はタバコを吸ってもよいという意味ではないのです。ほとんどの日本人はこの理屈が分からずに英文法を学習しているようですし、国際法には核兵器禁止の条項がないから「法律的に言えば」核兵器の使用は国際法違反でない等という日本の「専門家」もこの原理がわかっていないということです。この世の中には「してはいけないこと」は無数にあり、その中のごく一部で実際に行なわれていたり、行なわれる可能性のあることに関しては、法律や規則として記載されているのです。

      話を元に戻しますが、”It has been three years since ..."という以前は正しくなかった語法が正しいものとして認められたということは、従来正しかった "It is three years since ...."という語法が正しくなくなるということではありません。しかし、このような場合はよく、元来正統であったものが、異端視され、元来正統でなかったものが正統になるという立場の逆転が起こることがあります。この場合も、本来ならば「なぜ "It has been since ...."という語法が存在するのか?」ということが疑問であったはずなのですが、「"since"が使われているのになぜ "It is three years since.."と いう人もいるのだろうか?」という観点で疑問を抱いてしまうのです。「アメリカ人はなぜ英語を話すのだろう。」という疑問を発しないで、「イギリス人はなぜ英語を話すのだろう?」という疑問を発することは本来できないのです。この本来不思議であるはずの現象に何の疑問も抱かずに、疑問を抱く必要のない現象に対して論議がなされているのも日本の英語界の特徴です。これは次の例で、説明します。

    2. "Is this your dictionary ?" "Yes, it is my dictionary."

      このような英文は中学生でも知っているのですか、残念ながら,ここで教えられる英語の語法「疑問文の主語が "this"や"that"でも、それに対する答えの文では "it"という主語を使う。」に対して、「なぜ、そうなるのですか?」という疑問を英語の先生に対して発する中学生は全く存在しないのです。規則と名が付けば、どんな規則でも守りたがる国民性は中学生の段階でもう既に出来上がってしまっているということなのでしょう。(もちろん、「廊下は静かに歩きましょう」のような自分に都合のよい簡単な規則についてこのことが言えるだけでで、憲法などというレベルの高い規則になると、話は全く別ですが....)
      中学校で教えられているこの規則は、日本の英語学習者の意識の中に疑問の余地のない絶対的な真理として染み込んでいるため、実際の会話で

      A:"Is this your dictionary?"
      B:"Yes, this is my dictionary."

      のような例を見けると大騒ぎするのです。"Is this ...?"に対して"This is ..."で答えることがそんなに異常なことなのでしょうか? では、本来大騒ぎしなければならないはずの「"Is this ...?"や "Is that ...?"に対する答えが、"It is ..."なのか?」という理由を説明しましょう。実は、"It's my dictionary.”という文は "It ...that...の強調構文なのです。」次の変形を見てください。

      This is my dictionary. my dictionary this is --- "my dictionary"に関する修飾用法
      my dictionary that this is --関係代名詞 "that"を付けてもよい(=付けなくてもよい)
      It is my dictionary that this is.--- "It is"を付けて強制的に非修飾用法に 変換
      It is my dictionary.---強調されない部分 "that this is"を取り去り強調を徹底させる。
       
      英文法に記載されている「"Is this ....? に対する答えは "It is ..."でなければならない。」という規則は、そうでない例が多く存在するという事実によってただの嘘であることが分かっています。「"Is this ....? に対する答えは "It is ..."になる場合が多い。」という注意事項であったはずのものが、そのことを絶対的な規則にして試験の問題にしたがる日本の英語教育者によって拡大解釈され、従順な英語学習者に絶対的真理として信じられているのでしょう。全ての文にはそれに対応する "It ...that ..."の強調文 が存在することは、これまでの説明で明らかです。従って、一つの疑問文に対する答えとして使われる文は "It ...that..."の構造のタイプが少なくとも一つは理論的には必ず存在するのです。そして、実際それが使われているかいないかは、実際の英語に照らし合わせて確認することによってのみ判断できるのです。ほとんどの場合は、次の例のように、どのタイプも自由に使われています。

        You want to read this book.-- It's this book (you want to read.)
        I live in Osaka. ---- It's in Osaka (that I live).

      次に、上の You want to read this book. と同じ構造の You want to read something. という文について見てみましょう。
      この2つの同じ意味の文に対応する名詞"something"に関する「修飾用法」と「疑問文」 の表を下の示しておきます。

      You want to read this something.It is something you want to read.
      修飾用法something you want to readsomething it is you want to rea
      something = whatwhat you wantwhat it is you want
      疑問文What do you want to read ?What is it you want to read ?


      "what you want to read" = "what it is you want to read"
      "what do you want to read?" ="What is it (that) you want to read?

      となりますが、下線部分の "it is"や "is it" を使っている日本人にはあまりいませんし、このような "it is" の存在さえ知らないで、何十年も英語を研究している人が多い というのも不思議なことです。とにかく、観察力がほとんどゼロで、自分が既に知っていることを確認することしかできなくなってしまっているようです。だから、いくらよい教材を使って英語を勉強しても、難しい単語くらいを覚えるのが精一杯で、このような "it is"が出てきた場合でも、「"it"は"それ","is"は”です"」で終わってしまうのです。

    3. Who is it ?

      上の2つの例に対して、ほとんどどちらか1つの構造のみが使われる場合があります。そして、そのような偏りを説明できる理由がないため(東京ではなぜ”シンドイ”という語をあまり使わない理由を説明できないのと同様に)、そのことを英語学習者に知らせておく必要があり、文法書にそのことを記載するのです。「"Is this ....?"の答えは "It is ..." 」という注意事項もこれとよく似たケースです。強調構文だけが使われる例としては、次のような場合があります。

        You are at the door. "you"に注目する
        you who are at the door. --- 修飾用法
        It is you who are at the door. --- 強制的に非修飾用法に戻す
        It is you. ---- 非強調部分を省略
        Who is it ? --- 疑問文

      「どなたですか?」にあたる "Who is it?" という文が強調文であるということを知らないために、「"Who are you? "と同じ意味の "Who is it?"」ということを基にして、代名詞 "it" の意味の研究をしている人もいるくらいです。とにかく、言語の研究といえば、「1つの言葉に多くの意味があることを証明すること。」という考えから抜けきれない人が多いのです。
      余談ですが、ここで述べていることのほとんどは、私がフランス語に接してすぐに気がついたことです。例えば、Qu'est ce que c'est? 等は, 英語に置き換えれば "What is it that this is ?"なのですから、ピンとこない方がおかしいのであり、英米の文法ではこのような誰でも知っていることを記載することは無駄なのですが、それさえ知らない日本の英語学習者は非常に不幸であるということなのです。

  7. 【 "It is" の機能】

    これまで説明してきた "It is ..." は「修飾用法を強制的に非修飾用法に変える」 機能があるということでしたが、もう少し一般的にいうと「文でないものを文にする」機能があるということです。例えば、"Good" だけでは, 文であると認められませんが、"It is good." と "It is" を先頭におけば文になってしまうのです。そして、意味的には"Good" ="It is good." という関係が成り立ちます。従って、"It is good". と "Good." の違いは、前者が文であるのに対し、後者は文でないということです。そして、意味的には "it is" はゼロということになります。
    この原理によって、次のような文が理解できます。

      It's as if he was my brother.
      It's because I don't like him.
      It's that I want to do it.

    1. It's as if he was my brother.

      次のような文について考えてみましょう。

        He acted as if he was my brother.
        この文から, "He acted" という部分をとると, "he acted" によって表されている意味が欠落すると同時に、残された "as if he was my brother"はもはや文ではなくなってしまうという結果をもたらします。このとき、"he acted" という意味は欠落させたままでよいから、"as if he was my brother" を文として扱いたい場合には、"It is" を付ければよいということになります。

    2. It's because I don't like him.

      この文も上の例と同じで、次のような文について同じように考察してください。

        I did not offer to help him because I don't like him.

    3. It's that I want to do it.

      上の2つの例などから分かるように、英語には文とされている形が存在し、その要素の一部を文の先頭に移動させたり、外部のある語句を文頭に置くと、その状態ではそれを文とみなさないという法則があるように思われます。上の2つの例などは、"He was my brother." という文に外部から "as if" という語を先頭に置けば、"as if he was my brother" のように文でなくなってしまいます。ここでも, "I want to do it." という文に "that" を先頭につけるだけで、"that I want to do it" は文でなくなるのです。これを文にする方法は、"that" をとるか "It is" を付けるかのいずれかです。従って、"It's that I want to do it."は基本的には "I want to do it." と同じ意味になります。

  8. 【主語付き形容詞と "It is ..."】

    It is so kind of you to help me.

    重ね合わせ・省略の原理の1つの結果として「主語付きの形容詞」というものがあります。この形容詞のつくり方は非常に簡単で、次のように、S+V+C文型の文から簡単に作る ことができます。

    S+V+C一語の形容詞"of" を使う
    Nose is long.hearing-hardhard of hearing
    Skin is smooth.skin-smoothsmooth of skin
    Water is full.water-fullfull of water

    [参考] "hard of hearing" 等の "of" は「主語を表す "of"」と呼ぶことにしますが、現代の英語では A=Bの関係が成り立つ場合、A と B の順序を変える場合には B of A とするという認識が存在します。次の変形をみて、この認識がどのようにして生まれたかを理解してください。


    動詞の名詞形の前に置かれる所有格 (my knowledge, my love,.....etc) がその動詞の主語を表すように、形容詞の主語も名詞の所有格すなわち of + 名詞)で表すのです。
    実はこの "of" は英英辞書で表記上の約束として使われています。例えば、


    となるところです。

    このような、「主語付き形容詞」の例を下にあげておきます。


    上に挙げた、3つの文の日本語訳は、よく議論の対象になっている文です。議論になっている理由は、どの語が主語かがはっきりしないらしいのですが、英語によってこのような日本語を表すことによって、「象は鼻が長い。」という文の主語は「象」であり、述語は「鼻が長い」という形容詞であることは明らかです。このような理解ができるためのキーポイントは「主語付の形容詞」という概念です。実は、「主語付き形容詞」は日本語に多いということが、日本人の作る英文が冗長になる一つの原因になっています。「鼻が長い」という意味の一語の形容詞は英語にも見つかりませんが、次のような日本語の「主語付き形容詞」に対し、英語には一語の形容詞が存在します。

    日本語英語
    気分が悪い

    私は気分が悪い
    sick

    I feel sick.
    湿度が高い

    今日は湿度が高い
    humid

    It's humid, today.
    値段が高い

    この本は値段が高い
    expensive

    This book is expensive.

    日本の言語研究者達は、主語の問題を「は」とか「が」という日本語において装飾的な働きしかしていない「助詞」の問題にすり替えてしまい、「主語付き形容詞」という概念などは思いもよらないものなのでしょう。このように、母国語の構造を分析し、より深く母国語について理解するというのが、外国語の学習の大きな目的の一つです。
    「は」や「が」などは日本語においてそれほど重要でないということは、私たちが実際に使う日本語は「象は鼻が長い。」というよりも「象鼻長い。」という文であり、「俺気分悪い。」という文であり、「今日湿度高い。」であるということを考えればすぐに分かるはずです。この問題を議論し続ける日本の言語学者は「は」や「が」を取り去っても文が成立していることに、つまり「は」や「が」によって文の意味は全く影響を受けないということに全く気付いていないのです。このような議論は、英語によって5分程度で解決するものであるにもかかわらず、「この深遠な日本語と、それを自由に操る日本人の頭脳と感性の優秀さ」を証明するためには、この問題が永遠の謎であって欲しいと思っているかのように、本気で解決する努力をしていないのです。本気で解決する気があるなら、母国語での曖昧な違いが、外国語では明瞭に区別することができる場合が非常に多いのですから、上のような日本語を先ず英語で表現すればどうなるかということくらいは最初にしておくべきことなのです。それを怠るということは、最初から解決する気など全くないと言わざるを得ません。

    この「主語付き形容詞」と、文を文でないものに変換する "it is"が使われている文が有名な、”It's so kind of you to help me."という文です。
    以下の変形をみてください。


    上の変形から明らかなように、"It's so kind of you to help me."という文は "You ae so kind to help me."と同じです。
    ところが、ほとんどの文法書は、この文に関して次のような比較を行なってしまっているのです。

    文法の専門家ともあろうものが、この全く種類の異なる2つの文を比較してしまうという大きな誤りを犯してしまっているのです。
    (A)の "to help me"は「to+不定詞の副詞的用法」であるのに対し、(B)では "for you to help me"が意味上の主語として使われている「to+不定詞の名詞的用法」であることがまるで分かっていないらしく、「(A)の場合は "of you" となっているのに対し (B)では"for you"となっている違い」にしか見えないのには失望するばかりです。そしてその説明 として「"kind"のようにものの性質を表す場合は "for"ではなく "of"を使う。」等とい う全くデタラメなことを言っているのです。"for"や"of"は形容詞によって決まるという 考え方は完全に間違っていることは、次の2つの文によって明らかです。

    「"kind"の場合は "of"、"good"の場合には "for"」などということは、実際の英語に接 していれば、口が裂けても言えないことなのです。他人の書いた文法の参考書を真似するだけで、実際の英語によって検証する気がないから、このようなデタラメに対しても無神経なのです。ここで扱っている、「主語付き形容詞」と同じ意味の「of + 主語」という 形容詞は、"kind"以外にも次のように使われています。



  9. 【主語付き形容詞の概念の拡張】

    He makes happy of her.
    Let go of him.
    We speak ill of him.
    We had wonderful time of it.


     "you kind" = ”kind of you"という2種類の「主語付き形容詞」間の関係を、一般化して表せば、「Aが名詞で、Bが形容詞の場合で,かつ A=Bという関係が 成り立っていれば A+B という語順は B+of+Aに変換することができる。」にな りますが、「Aが名詞で、Bが形容詞の場合」という制約条件が取り去られることによって英語は更に発展してきています。
    但し、本書の主張通り、動詞(verb)も形容詞の定義に従えば、形容詞ですから、この制 約条件を取り除く必要はありません。つまり、現代の英語では A=B であれば、A+B は B+of+A になるという認識があります。
    次の例を見てください。

    1. He makes her happy.=> He makes happy of her.(her = happy)
    2. Let him go. => Let go of him.("him"="go")
    3. We speak he is ill.=>We speak him ill.
      =>We speak ill of him.
      We had it was wonderful time.=>We had it wonderful time.
      => We had wonderful time of it.

    (注)上の斜体文字は実際には存在しません。

    学校文法では ”let go" や "make happy" などの表現を説明することができません。このことが理解できる前提として、「動詞は形容詞である」という発想、「S+V+O+C 文型は,"I find" + " he is nice."のような2つの文の重ね合わせと省略の結果の"I find him nice."である。」という知識が必要ですから、学校文法には期待できません。こ こでも、例によって、これらの文の存在を無視し続けるか、これらの文を「文法的に誤り」と宣言することでしょう。  


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